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アート、演劇、食べること。とにかく感じることが好き。観て、食べて、感じたものを徒然にご紹介
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スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』

博多座で公演中のスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』を観に行ってきました。

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ザクッと総括すると、ほんとに驚かされたし、楽しかった!
では、以下細かく。
*****

生でスーパー歌舞伎を観るのは初めてで、しかも漫画の『ワンピース』を歌舞伎化するなんて一体どんな風になっているのだろうと、好奇心と高揚感が混じった不思議な気持ちで博多座へ。

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博多座エントランスには大きな垂れ幕が。

だって、『ワンピース』って言ったら、腕がびょーんって伸びたり、登場人物たちも人間離れしてるし。
どういう風に歌舞伎になるのっていうか、そもそもアレを舞台化するのって出来るの!?って。

てなわけで、観劇開始!

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今回の舞台で演じられるのは、原作の51巻~60巻で描かれている“頂上決戦”のお話し。
「漫画読んでないし、51巻からの話をいきなり観てもわからないんじゃない?」っていう人のために、一幕目は物語の背景を紹介するような内容かな。
プロローグ的な位置づけで、全体の助走的な役割を果たす幕。

その中で、一際目に留まったのは坂東巳之助さん演じる三刀流の剣の達人・ゾロ。
出番は少ないのよ。
でもでも、存在感が大きい!
漫画と同じく、両手に一本ずつ刀を持ち、口に最後の一本を咥えてる。
想像するだけで、頬の筋肉がプルプル…。

そんな普通の人間としては相当無理をしている構えであるのに、
立ち回りでは体を大きく動かしながらの見事な太刀さばきを披露。
…かっこいい♡
ドスが利いた声もかっこいい(あんまり喋らないけど)。

そして休憩をはさみ、二幕目、三幕目と進むわけですが、
そこからがスーパー歌舞伎の本領発揮!

まず、映像の使い方がうまい。
プロジェクションマッピングを使ってるんですよ。
しかもね、しかもね、舞台上だけじゃないの!
横に目をやると二階のバルコニー席に沿って映像が映し出されているし、
見上げると天井の枠にそっても映像が。
すごい。これ、ちゃんと博多座客席に合わせてプログラミングされてある。

たまに街中で観るプロジェクションマッピングって、
平面に映してる普通の映像と変わらんのじゃない?ってことあるけど
これは全然違う。

自分たちがいる客席を囲むように映し出される映像が
お芝居の内容に合わせて動くから、自分たちもお芝居の世界に入ったような感覚になる!
これこそ、プロジェクションマッピングの醍醐味だよね。
やばい。楽しい。

演出の派手さはそれだけじゃないのよ。
とあるシーンでは舞台上に滝が出現(ほんとは波)!
それが半端ない水量なのですよ。
10トンあるらしいですばい。
いや、ほんと滝ですよ。大袈裟じゃなくて。
効果音なんてなくても水の「シャア―――――ッ」て音が会場中に響き渡るし、
舞台にはどんどん水がたまっていくし。
その上で俳優さんたちが派手に立ち回るから、その度に水しぶきが派手に上がること。
(いや、水しぶきって言えないくらいの量だな)

ふと客席を観ると、前の方の席の方は配布されたであろうビニールシートでしっかり防水。
スプラッシュマウンテンみたい。


そして、話題になっていた猿之助さんの宙乗り。
もう観客席の盛り上がること、盛り上がること!
すごいよ。
ミュージカルの『ライオンキング』で動物たちが客席に現れたとき以上に
みんなのテンションが高まってるの!

他にも色々あるんだけど、この舞台の何がすごいって
これだけ派手な演出が盛り込まれてるのに、しんみりさせるところはきちんと泣かせる。
その緩急さ。

そして、上記にあげたような派手演出に負けないくらい、
歌舞伎の見得や立てをかっこよく盛り込んでいる。
演出を手掛けた市川猿之助さんの、歌舞伎に対する愛情をすごく感じる。

それに、猿之助さんは「若い歌舞伎役者にスーパー歌舞伎には出てもらうことで、あらためて古典の歌舞伎の魅力を知り、これからを盛り立ててほしい」というような想いがあったとのこと。

それは、この舞台に体現されている。
猿之助さんは主役のルフィ役なんだけど、
きっと意図的に目立たせていたのは、さっきあげた若手の巳之助さん。

巳之助さんには、ずっと魅せられっぱなしだったなぁ。
ゾロもそうだけど、すごかったのは二幕目で演じたオカマのボン・クレー。(今回巳之助さんは3役)。

原作のボン・クレーを知ってる人でも、知らない人でも心を持ってかれる。
デフォルメしたオカマっぽさ全開で、登場するだけで皆大爆笑。
あと、声もなんだか酒やけしたみたいなダミ声で、口調まで完璧!
でも、締めるときは締める。
(クールなイメージの巳之助さんがこんなになるなんて、役者さんてすごい)

あぁ楽しかった。
新しい歌舞伎の可能性を観たって気にさせてくれるし、
きっとこれでファンになった人たちが、これからの歌舞伎を応援していくんだろうなって思う。

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観劇後、こののぼりを見るとなんだか感慨深い。

公演は4月26日まで。
人気公演なので、お早めに。

スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』

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『正札附き根元草摺』坂東玉三郎特別舞踊公演より

博多座さんで2016年2月21日(日)まで公演中の
『坂東玉三郎特別舞踊公演 中村獅童出演』の二幕目、
『正札附き根元草摺』の感想です。

公演全体の感想
同公演、一幕目『舟辨慶』の感想


この幕では、一幕目の『舟辨慶』より舞踊の要素がぐん
と強くなります。
ちなみに、この幕は玉三郎さんお休みです。

***あらすじ***
曽我五郎(中村獅童)は父の敵工藤と対面するため、
鎧を小脇に駆け出すが、小林妹舞鶴(中村児太郎)が
鎧の草摺(防具)を引いて止め、「放せ」「止めた」と
力を競う。五郎が勇み立つと、舞鶴はしおらしい仕草で
止め、二人は連れ舞いする…。
*********


もうっすごく好きでした。観ていて楽しい幕!
この幕は照明を落とした真っ暗闇から始まり、
音だけが聞こえてくる…。
そして、明転!
そこにいたのは、雛壇にずらりと並んだ
長唄やお囃子の方たち。壮観です。

その雛壇が中央から左右に分かれ、
後ろから、台座に乗った獅童さん&児太郎さんが
現れます!!
この瞬間、心を奪われましたね。
まるでお人形さんのように綺麗で華やかな登場です。

舞台は、基本的にずっと舞なのですが
もう獅童さんのリズム感が素晴らしく、
玉三郎さんがよく獅童さんと共演されている理由が
わかりました。

また、日本の音楽は西洋のものと比べると
これまでは静のイメージがあったのですが
獅童さんの舞とともにに音を楽しむと、
日本の音はこんなにも躍動感にあふれていたのかと驚きます。

児太郎さんは、役にぴったりですね。
途中でか弱い女の子をよそって「お~こわ」と
言っている台詞も「絶対そんなことない!」と
観客に心の中で突っ込ませるようなコミカルさがあり
楽しかったなぁ。

児太郎さんは学生時代にラクビ―をやっていたそうで、
この怪力女性役はまさに児太郎さんのための役だなと。
それを持ってきた玉三郎さん、愛情深いですね。

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『舟辨慶』 坂東玉三郎特別舞踊公演より

博多座さんで2016年2月21日(日)まで公演中の
『坂東玉三郎特別舞踊公演 中村獅童出演』の一幕目、『舟辨慶』の感想です。

玉三郎さん


公演全体の感想はこちらから↓
坂東玉三郎特別舞踊公演


この舞台で描かれているのは、源平の盛衰の悲哀。
壇ノ浦の戦いの後、兄頼朝の不興をかった源義経は、弁慶(中村獅童)らとともに都落ちをし、西国を目指すこととなる。静御前(坂東玉三郎)は、義経との別れを惜しみながら舞い、そして去っていく。その後、旅路を進む一行の前に現れたのは、源氏に滅ぼされた平知盛(坂東玉三郎二役目)の霊。一行に襲い掛かるが…。

これは、歌舞伎でよく上演されている『舟辨慶』を玉三郎さん演出でもっと能に近づけたものですが、幽玄さ・切なさを感じる作品でしたね~。
特に静御前の舞い終わった後、船頭がやってきたことで、もう義経たちは旅立つときなのだ、自分は去らなければならないのだと悟ったときの様子。

静はしゃがみこんで烏帽子をはらりと落とす。
そして静が去った後、舞台に置き去りになった烏帽子。

…切ない!辛い!
だって、彼女はきっとわかっていたはずなんですよ。
もうこれを最後に義経には会えなくなるんだって。
その辛さが玉三郎さんの全身からにじみ出ていて、観ているこちらの胸も締め付けられました。

また、玉三郎さん演出のこの舞台では、知盛の霊は花道にあるすっぽんから登場するのですが
これは非常に効果的でした。
ふっと現れた亡霊の様子が表現されているなと。
それに、登場した際の恨めしさいっぱいの声。すさまじいものがありました。

玉三郎さんが「知盛は歌舞伎では鬼のようにあらわされるけれど、
自分がやるときはそうではない形にしたい」とおっしゃっていたことはこれだったのかと。

通常の『舟辨慶』よりは派手さはないかもしれません。
でも、きっと作品の性格にあっているのはこんな演出なのでしょうね。

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坂東玉三郎特別舞踊公演

博多座さんで2月21日(日)まで公演中の
『坂東玉三郎特別舞踊公演 中村獅童出演』を観に行ってきました。

玉三郎さん

一言で言うと、「美しいものは美しい」。
何も考えなくとも、美しいものはただそれだけで、人を感動させるのだなと。
歌舞伎がどうとか、日本舞踊がどうとか、能がどうとか。
玉三郎さんの舞いは、そんなことが頭をよぎる隙もないくらい絶対的な美しさがある。

玉三郎さん曰く「難しい理屈などは勉強しないで、まずはそのままを観て楽しんで頂きたい」
とのことでしたが、まさにその通り。
だから、伝統芸能ってなんだか難しそうと感じられている方にこそ観てもらいたい。

演目は『舟辨慶』『正札附き根元草摺』『二人藤娘』の三幕。
それぞれの感想は、また後日別記事でご紹介しますね。

舟辨慶感想
正札附き根元草摺感想

いやぁ、日本に“女方”というものがあって良かった!

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